POINT
この記事でわかること
- ✓ 髪の毛がアルカリ性の洗剤で分解される仕組み
- ✓ 洗剤で対処できる詰まり・できない詰まりの見分け方
- ✓ 重曹やクエン酸が髪の毛に向かない理由
- ✓ パイプクリーナーの正しい使い方と危険な使い方
- ✓ 詰まりが残るときの対処と、業者に頼む目安
排水溝の髪の毛はアルカリ性の薬剤で分解できる
まず押さえておきたいのが、髪の毛が「なぜ溶けるのか」という点です。ここがわかると、洗剤選びで迷わなくなります。髪の毛はアルカリに弱いタンパク質でできている
髪の毛の主成分は、ケラチンと呼ばれるタンパク質です。爪や皮膚の角質と同じ仲間で、水にはまったく溶けません。だからこそ、排水管の中で長期間残り続けます。 ところが、このケラチンには弱点があります。**強いアルカリ性の環境に置かれると、結合が切れて分解される**という性質です。市販のパイプクリーナーに水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)が配合されているのは、この作用を利用するためです。 塩素系のパイプクリーナーに含まれる次亜塩素酸塩も、酸化によってタンパク質を分解します。製品によっては両方の成分を組み合わせ、髪の毛だけでなく皮脂やぬめりにも対応しています。 一方、酸性や中性の洗剤ではケラチンはほとんど分解されません。「排水口用」と書かれていても、水垢やカビを対象にした製品では髪の毛に効きにくいので、パッケージの対象汚れを確認してください。洗剤で対処できる詰まりと、できない詰まり
パイプクリーナーはあらゆる詰まりを解消できるわけではありません。今の状態がどちらに当てはまるか確認しましょう。| 症状 | 洗剤で対処できるか | 対応 |
|---|---|---|
| 以前より排水が遅い | ○ 期待できる | パイプクリーナーを試す |
| 排水口からにおいがする | ○ 期待できる | パイプクリーナーを試す |
| 水がゆっくりだが流れる | △ 状態による | まず試し、改善しなければ次の手へ |
| 水がまったく引かない | × 難しい | 薬液を安全にすすげないため業者へ |
| 汚水が逆流する | × 難しい | 配管の奥や共用部が原因の可能性 |
| 指輪やキャップを落とした | × 溶けない | 固形物は薬剤では除去できない |
髪の毛を溶かす洗剤の種類と選び方
洗剤売り場にはさまざまな製品が並んでいますが、髪の毛に効くものは限られます。| 種類 | 髪の毛への作用 | 主な対象 |
|---|---|---|
| アルカリ性パイプクリーナー | ◎ タンパク質を分解する | 髪の毛・皮脂・油汚れ |
| 塩素系パイプクリーナー | ○ 酸化により分解する | 髪の毛・ぬめり・除菌 |
| 重曹(弱アルカリ性) | × ほとんど分解しない | 表面の軽い皮脂汚れ |
| クエン酸(酸性) | × 分解しない | 水垢・石けんかす |
髪の毛への対応が明記された製品を選ぶ
商品を選ぶ基準はシンプルで、パッケージに「髪の毛」「排水パイプ」「詰まり」といった表示があるかどうかです。同じ排水口用でも、においやぬめりの予防を目的とした製品では、配管内の詰まりまでは届きません。 注意したいのは、成分名だけで比較しないことです。同じ「水酸化ナトリウム配合」でも、濃度や粘度によって配管内での留まり方が変わります。粘度の高いジェルタイプは、水にすぐ流されず汚れに接触しやすいのが特徴です。 「強力」「業務用」といった言葉だけで選ばず、使用場所と対象汚れの表示を優先しましょう。予防目的と詰まり解消で使用量が異なる製品もあるため、今の症状に合う用法が書かれているかも確認してください。重曹やクエン酸では髪の毛は溶けない
「重曹とクエン酸を混ぜて泡で掃除する」という方法を見かけますが、髪の毛の詰まりには向きません。 重曹は弱アルカリ性で、ケラチンを分解するほどの力はありません。クエン酸に至っては酸性なので、そもそも作用の方向が逆です。両者を混ぜたときに出る泡は二酸化炭素で、汚れを浮かせる効果はあっても、髪の毛を溶かす働きはありません。 排水口の表面をこすり洗いする用途なら選択肢になりますが、**配管の奥にたまった髪の毛には別の薬剤が必要**です。専用品の代わりとして大量に投入しても、詰まりは解消しません。 なお、クエン酸などの酸性のものと塩素系パイプクリーナーが混ざると、有害な塩素ガスが発生します。前に使った洗剤が残っている可能性があるときは、続けて別の製品を入れないでください。使う場所と配管素材を確認する
パイプクリーナーには、浴室・洗面台・キッチンなど複数の場所に使える製品と、用途を限定した製品があります。髪の毛の詰まりなら、浴室や洗面台の排水口への使用が明記された商品を選びましょう。 配管や部品の素材も確認が必要です。住宅の排水管に多い塩化ビニル管に対応する製品は多いものの、アルミ、銅、ホーローなどには使えない場合があります。浴槽の排水栓やディスポーザーを対象外としている製品もあるため、パッケージの「使えないもの」の欄に目を通してください。 浄化槽を使っている住宅や、築年数の古い配管では条件が異なることもあります。判断がつかない場合は、洗浄剤か設備のメーカーへ問い合わせましょう。現場で使われている強アルカリ性洗剤という選択肢
当店の「最強くん」は、ハウスクリーニングの現場経験をもとに開発した強アルカリ性のジェル状洗剤です。ジェル状のため薬液が汚れに留まりやすく、髪の毛や油汚れにも対応します。 排水管に使う場合は原液のまま、200mlを目安に投入します。汚れの程度によって量は調節できますが、実際に使う際は手元のラベルの表示に従ってください。家庭用の配管を傷めない成分で作られている一方、強アルカリ性のためほかの洗剤や化学製品との併用はできません。 固形物や重度の詰まりを解消できるものではないため、前述の表で水の流れを確認したうえでお使いください。 排水口専用パイプクリーナー「最強くん」の詳細を見る排水溝の髪の毛を溶かす手順
洗剤が決まったら、次の流れで作業します。用意するもの
- パイプクリーナー(髪の毛への対応が明記されたもの)
- ゴム手袋
- 使い捨ての道具(割りばし・ティッシュ・古歯ブラシなど)
- ゴミ袋
- タイマー(スマートフォンのアラームで可)
- 保護眼鏡・マスク(製品表示で指定がある場合)
- 目皿やヘアキャッチャーの髪の毛を取り除く
- 換気してゴム手袋を着ける
- 指定量を投入し、表示された時間だけ置く
- 十分な水で流す
手順1|表面の髪の毛を先に取り除く
薬剤を入れる前に、目皿やヘアキャッチャーに絡んだ髪の毛と大きなごみを取り除きます。表面が髪の毛で覆われていると薬液が配管に入っていかず、奥の汚れまで届かないためです。 ゴム手袋を着け、割りばしやティッシュで回収するとぬめりに触れずに済みます。部品を外す場合は、取り付けの向きと順番を覚えておきましょう。写真を撮っておくと戻すときに迷いません。 取扱説明書に記載のない部品まで分解するのは避けてください。アクセサリーなどの固形物が見えている場合も、薬剤は入れずに取り出せる範囲で回収します。手順2|換気して保護具を着ける
換気扇を回すか窓を開け、ゴム手袋を着用します。製品表示で保護眼鏡やマスクが指定されている場合は、あわせて用意してください。 強アルカリ性や塩素系の薬剤は、皮膚に付くと刺激やただれを起こすことがあります。とくに目に入ると危険なので、しゃがんで顔を排水口に近づけた姿勢での作業は避けましょう。容器を強く握りながらキャップを開けると薬液が飛び出すおそれがあるため、安定した場所に置いてゆっくり開封します。 作業中は子どもやペットが近づかないようにし、すすぎが終わるまで排水口を使わないことを家族にも伝えておくと安心です。手順3|規定量を投入して時間を置く
商品表示に記載された量を、排水口へゆっくり注ぎます。注ぎ口を排水口に向け、跳ね返らないように注意してください。別の容器へ移し替えたり、ほかの洗剤を足したりしてはいけません。 放置時間は製品によって異なります。タイマーを使い、表示された時間を超えないようにしましょう。**長く置けばよく効くというものではなく、はがれた汚れが途中で固まって再び詰まるおそれがある**と案内している製品もあります。 薬液が排水口にたまって引いていかない場合は、追加投入せずに作業を止めてください。使った製品名と量、投入した時刻を控えておくと、後で業者に相談する際に役立ちます。手順4|十分な水で流す
規定時間が過ぎたら、商品に記載された方法で水を流します。水量が少ないと、溶けた汚れや薬液が配管内に残り、再び流れが悪くなることがあります。バケツ一杯分を目安に、しっかり流しましょう。 すすいだあとに薬品臭が残ることがありますが、換気を続けていれば徐々に薄れていきます。においを消そうとして別の洗剤を加えるのは、混合による事故につながるため避けてください。 1回で改善しない場合は、十分にすすいだうえで再使用の間隔を確認します。同じ日に繰り返し使わず、判断に迷うときはメーカーへ相談しましょう。やってはいけない対処法
- ほかの洗剤と混ぜる——塩素系と酸性のものが混ざると有害な塩素ガスが発生します。前に使った洗剤が残っている可能性があるときも、続けて別の製品を入れないでください
- 熱湯を流す——住宅で多く使われる塩化ビニル管は熱に弱く、熱湯を繰り返し流すと変形や接合部の劣化につながるおそれがあります。お湯を使う場合も、給湯器から出る程度の温度にとどめましょう
- 規定時間を超えて放置する——効果が高まるわけではなく、汚れが再固着する原因になります
- 水が引かない状態で投入する——薬液を安全にすすげなくなります
- ワイヤーを力任せに押し込む——詰まりを奥へ移動させたり、配管を傷つけたりします
髪の毛が溶けず詰まりが残る場合の対処法
表示どおりに使っても改善しない場合は、薬剤を追加する前に詰まりの位置を見直します。次の順で確認していきましょう。排水トラップを分解して掃除する
排水トラップは、内部に水をためて下水のにおいや害虫の侵入を防ぐ部分です。構造が曲がっているぶん、髪の毛や石けんかすがたまりやすい場所でもあります。 取扱説明書に外し方が書かれている場合は、ゴム手袋を着けて部品を順番に取り外し、汚れを取り除きます。作業前に写真を撮っておくと、組み立てで迷いません。 構造がわからない、部品が固くて動かないといった場合は、無理に外さないでください。破損や水漏れの原因になります。賃貸住宅では、分解の前に管理会社へ確認しておきましょう。ラバーカップや専用器具を使う
排水口の形状と設備の取扱説明書を確認したうえで、ラバーカップ(すっぽん)や排水管用の清掃器具を使う方法もあります。器具の種類や差し込める長さは設備によって異なるため、対応を確認してから使ってください。 使用前には、薬液が残っていないことを必ず確かめます。薬剤が残った状態で圧をかけると、飛散する危険があります。器具が途中で動かなくなった場合は、力を加えずに作業を中止しましょう。業者へ依頼する目安
次のような状態なら、家庭での対処は難しい段階です。- 水がまったく流れない
- 汚水が逆流してくる
- 浴室・洗面台・キッチンなど複数箇所で同時に流れが悪い
- 掃除しても数週間で再発する
- 排水口以外の場所から水がにじむ